日常生活や仕事をするうえで、
「過剰な要求をしてくる人」に困ったことはありませんか?
職場の上司に
「これやっといてね」
とライトに厳しい案件を任されたり、
あまり仲良くない友達に
「今月生活が苦しいからお金貸してくれない?」
って図々しい依頼があったり、
焼きもちやきの恋人に
「LINEの絵文字をもっと増やしてよ!返信早くしてよ」
とか言われたり(笑)
なんとな〜く相手の言っていることも理解できるし、
なんとな〜く「そうだよなぁ」って受け入れてしまい、
安易に引き受けてしまう。
これ、続けると疲弊してしまいます。
一回や数回程度なら耐えられますが、
繰り返すと心身が疲れてしまいます。
私も、過去、「なんでもやります!」スタンスで、
仕事にとりくみ、
なんでもできないことに直面した経験があります。。。
そうならないための考え方のコツを紹介します。
1.「課題の分離」の重要性
それは、「課題の分離」という、心理学者アドラーの教えです。
イギリスにこんな言葉があります。
You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.
~馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない。~
自分と相手は違う生き物であり、
自分がしてあげられるのは、環境を与えるまで。
手取り足取り全てをやってあげるのは、本人のためになりません。
逆に自分自身も、親や先生や先輩は自分にサポートしてくれることはあっても、
「水を飲む」のは自分であるという自覚が大切です。
アドラーは、
これらの問題を「課題の分離」と定義して、
他者の課題には踏み込まないようにしましょう、
と言っています。
2.スポーツクラブ会員からのご指摘
具体的なケースで見てみましょう。
私は、本業とは別にマイナースポーツのクラブチームを運営しています。
本クラブは、老若男女が集まり、年齢差なく、
和気あいあいとした雰囲気の中、競技を楽しんでいます。
そのクラブを運営・拡大していくために、
一人の力では難しいので、
ボランティアで幹部体制を構築しました。
幹部は、練習開始場所を決めたり、メンバーに周知したり、
スポンサー様と調整したり、お金の管理をしたり、
夜な夜なミーティングして、クラブ方針を決めていく事もしています。
クラブを支える裏方として、頑張ってくれています。
しかし、ある時、問題が発生しました。
とある会員からご指摘があがりました。
その日、いつも練習に最後まで居続ける幹部が
たまたまプライベートで用事があったので、午前中で帰ったんですね。
残された会員は、午後から参加する人も来て、
夕方まで練習を継続していました。
その夜、会員から2点ご指摘をいただきました。
①練習の最後まで、幹部はい続けるべきではないか?
少し薄情な気がする。
②練習時のそのペア決めはクラブ側で対応するべきではないか?
いろんな人と打ち合いたい。
年齢や性別も様々な人が集まるため、体力面やスキル面も異なる
ので、クラブとしても打ちたい人と打ってくれれば良いと判断していた。
これを聞いた時、私の所感は。
①のご意見をそのまま受け入れてしまうと、
ボランティアで取り組んでくれている幹部に、
プライベートよりクラブを優先させて対応させることを
強要することになる。
「プライベートを削って、残って対応して欲しい!」というのは気が引けます。
②のご意見について、
公平にみんなと打ち合うことも必要ですが、
スキルがそれぞれ異なるので、ペア決めをクラブが介入する難しさがあります
一つ、重要なポイントなので説明させてください。
冒頭「過剰な要求をしてくる人」という話をしましたが、
この会員はその類の方ではございません。
明らかに過剰な要求というのは、
対応方法が明確ですが、
「正論がゆえに判断に困る」問題の方が、
検討材料として適していると判断したため、
このケースを選定しました。
さぁ、どうしましょう。
3.解決方法の模索
これを、「課題の分離」の観点で、みていきましょう。
自分(クラブ)の課題と、他人の課題を整理します。
その会員と深く話をしました。
①のケースを深掘りすると、
会員は、練習参加時に、幹部がいないと
寂しい気持ちになるということのようです。
ある意味、幹部メンバーは、
会員に愛されている証拠でしょうね(笑)
いつもいる幹部が自分が来た時にいない事実は、
人によっては、
「自分が大切にされていないのではないか?」
と思う人もいます。
一方、自分(クラブ側)の課題は、
寂しい思いのメンバーを発生させてしまった事実がある事。
会員の「寂しい」という感情は、他人の課題なので、
どうしようもありません。
そうならないように環境を整えることがクラブの課題です。
そこで、
クラブとして練習開始時刻と終了時刻を明確にする事
としました。
開始から終了時刻までの時間は、幹部含めた会員がいる時間となります。
仮に遅れて来た会員がいたとしても、
「練習時間外だから(幹部やその他会員がいなくても)しょうがないか」
と、納得感を与える事ができます。
また、幹部も終了時間を超えると、
自由時間になるので遠慮なくプライベートに切り替えて、
後ろ髪をひかれることなく、楽しむことができます。
②のケースを考えてみましょう。
会員の意見としては、
「練習時のペア決めをクラブがしてほしい」ということ。
ただし、そこに介入すると、
体力面・スキル面が異なる会員同士の調整が難しいのです。
若い会員は、お年を召した会員より体力があるので、
休憩時間も短く済み、継続してずっと打ち続ける事ができます。
体験まもない会員とベテラン会員間では、
スキルも異なるし、目指すべき所も異なるので、
双方の意見の落とし所を探る必要があります。
しかし、経験の浅いメンバーからすると
上手な人と打つ事で気づきにも繋がるし、
楽しい感情を与える事ができるのです。
さらに深掘りすると、
「一緒に打ちましょう」、
なかなか言えない気恥ずかしさがあるようです。
ここにも各人の個性が絡んでいますが、
消極的な性格というのは、他人の課題です。
他人が介入してどうこうできる問題ではありません。
クラブとして、こちらも環境を整える事にフォーカスします。
そこで、
練習開始から1時間は、クラブ側がペア決めを行い、
5分〜10分単位でまわしていく
事に決めました。
スキルの高い選手にとっては、
最初の1時間の時間を割くことになりますが、
クラブ全体のスキルアップのために尽力することには好意的でした。
経験の浅いメンバーからすると、
練習開始から1時間はいろんな選手と打てるので満足感も増します。
4.まとめ
①②の問題ともに、
「課題の分離」の考えのもとに、
自分の課題と他人の課題を分離して考えると、
「環境を整える」ことで対応できます。
意見をあげていただいた会員にも方針を伝え、納得頂けました。
その会員は、
「僕はこの競技が好きだから継続していくけど、
色んな意見の人がいるから伝えておくね」
と。
目指すべき所は同じところを向いていますが、
年代や性別や育ってきた環境が異なると色んな意見が出て当然ですよね。
こういった意見は、
貴重な情報としてきちんと対応していきたいと思います。
日常生活でも、仕事のシーンでも気をつけなければいけないことがあります。
誰かから意見を言われた時に、
根本的な解決を避けていませんか?
特に否定的な意見を言われると、
過剰にマイナスに感じたり、
辛辣に感じたり、
いじわるに感じたり。
時には、
あの人は、心配性だからそういうこと言うんだ。
あの人は、配慮にかける人間だからまた言っている。
あの人は、嫉妬深いから文句が多いのね。
これで片付けちゃうと、何の解決にもなりませんね。
ここで思考停止になるのではなく、
本当の問題を「対話」を通じて深掘りしていくことが、
みんなが幸せになることにつながると確信しています。
勝手に脳内で判断して、
対話を避けて楽な方にいくと、
小さなゴミが雪だるま式に大きくなってしまいます。
組織を構築する側として、意識しなければいけない点が、
「ちょうど良い環境」を模索すること。
心理学者マズローによると、
人間はある程度の欲求が満たされると、
自己実現に向かう成長欲求という新たな欲求が出てくる
と言っています。
人間の欲求は止まらないんですね。
ある程度満足していても、
こうなったらいいのにって事がどんどん思い浮かんできます。
クラブ運営もそうです。
ある程度の「ちょうど良い」レベル感があるのに、
誰かが「もっとよりよく」を追求し過ぎてしまうと、
誰かのストレスが溜まって、面白くなくなります。
それが正論であればあるほど、
否定材料もないのでそのまま決定事項になり、
誰かのストレスが溜まっていく。
仕事やPTAや学校行事も同じじゃないですか?
よりよく、もっともっと、カイゼン・・・
一度決まってしまったことを、
否定するのは作り上げた時より、倍の労力がかかります。
もちろんよりよくカイゼンしていくことは、大切な事ですが、
「ちょうど良い」レベルにするために
ブレーキをかけることも時には重要だと思います。
持続可能なコミュニティには、
みんなが気持ち良いと感じる「ちょうど良い」領域は存在します。
資本主義社会から自由主義社会を経て、
働き方改革、コロナによるライフスタイルの変革が求められています。
ストレスの少なく楽しい毎日を過ごせるよう、
みんなの「ちょうど良い」を実現するため、
「課題の分離」の概念を学び、
心地よい空間がつくっていきましょう♪